H.モーザー | H.MOSER
沈黙の時を経て、不死鳥のごとく蘇った「H.Moser&Cie」
情報過多のこの時代、たまにはちょっと立ち止まって、1つの時計やジュエリーをややじっくり観察してみる「ゆる極(きわみ)」シリーズ。
「ゆる」というくらいなのでストイックに追い求めるわけでなく、気楽に少し掘り下げようという趣旨をご理解頂きたく。
6回目のゆるアイテムは、 "H.モーザー"の「エンデバー センターセコンド」。
あまり耳にしたことがないこちらの時計「H.モーザー」はヨハン・ハインリッヒ・モーザー氏から名前がとられています。
時は19世紀、時計づくりの伝統と技術が継承されるスイス、シャフハウゼン。(今ではIWCで有名な地ですね)祖父と父が時計師というサラブレッドの一家に生まれたH.モーザー氏は、若干21歳にして自身の工房を持ちます。
企業家精神あふれる彼はその後1828年、ロシアはサンクトペテルブルグに自身のブランド「H.Moser&Cie」を設立しました。
ロシアってところが意外です。
モーザー自身もしくは彼の代理人による検査を受けない限り、時計を決して店頭に出さないというポリシーを貫き、品質の高さで人気を博し、大成功を収めたんだとか。
43歳の時に彼はシャフハウゼンに戻り、地域発展の産業活性化を推し進めていきます。IWCの創業に際して、土地の提供や電力供給でバックアップしたのもH・モーザー氏だったとか。こうなると肩書は、「時計職人」兼「実業家」、さらには「名士」までくっついてきます。カリスマ性満ち溢れるお方だったんでしょうね。
彼の死後、ロシア社会主義革命、そしてクォーツ時計の登場等の影響により、人々に惜しまれながらも時計製造から撤退。
紆余曲折を経て、2002年”H.Moser&Cie.”の再設立となり、
自社ムーブメントを開発するために、ハリー・ウインストンの超複雑時計
『オーパス7』を手掛けた独立時計師のアンドレアス・ストレーラー氏を迎える事に。2005年バーゼルでは、新生モーザーとして「パーペチュアル1」他を発表し本格的に復帰を遂げました。
いずれの時計も「シンプルに使いやすく」がモットー。
時計の心臓部である脱進機をモジュール化。調整やメンテナンスがしやすい独特の設計となっています。時計において「シンプルな仕組みで高い精度を維持する」ってことが難しいトコロであり、H.モーザーの強みでもあります。もちろん、ムーブメントは全て自社製、すべての時計が手作業で組み立て仕上げされてます。
男性時計ですが何とも手元を美しく魅せてくれ、新年の気分が盛り上がる1本。デカ厚ブームに食傷気味な御仁にこそ興味を持っていただきたい、静かなる情熱を秘めた時計なのです。
立体的な針のフォルムと独特の光沢を放つブラウンのサンレイ仕上げの文字盤が神秘的。なんと7日間のパワーリザーブを確保した手巻き時計は、ドレッシーさも性能も文句なし。
H.モーザー
エンデバー センターセコンド(旧名称:モナード)【生産終了モデル】
343.505-019
ケースサイズ:41mm
材質:ホワイトゴールド
ムーブメント:Cal.HMC 343 手巻き
1万8000振動/時 26石
パワーリザーブ約7日間 30m防水
クロコダイルストラップ
販売価格 1,480,000円 (2015/1/16現在)