STAFF RECOMMENDATION vol.10『それでもクロノが好き』

 

それでもクロノが好き

皆様はどのようなポイントを優先して時計を選ばれましたか?

コストパフォーマンスやデザインそしてその時計が持つ雰囲気など・・・。
どれが自分にとって優先順位が高いのか?
譲れない点は?妥協できるところは?
それを考えるのも新しく時計を買うときの楽しみの一つですよね。

店頭に立ち、多くのお客様と色々な話をさせていただきますと、
機能とデザインを重視され、クロノグラフを選ばれる方が数多くいらっしゃいます。

中のムーブメントにこだわる方、クロノ特有のデザインが好きで機能は使わないと断言なさる方、
様々なお客様がクロノグラフをお求めになりますが、
機械式クロノグラフには、時計好きの心掴んで離さない何かがあることは間違いありません。

そんな私もクロノグラフを愛してやまない人間の一人ですし、
実際にOMEGAのスピードマスターを所有しています。
『なぜ好きなのか?』と問われても明確に答えられない気がしますが、敢えて答えるとすれば、
クロノグラフならではのデザインと機械式ムーブメントが融合した雰囲気なのでしょう。

画像: OMEGA スピードマスター プロフェッショナル 3570-50

【OMEGA スピードマスター プロフェッショナル 3570-50】

機械式クロノグラフのビッグネーム
オメガRef3570-50。
何故このクロノグラフがこんなにメジャーになったかと考えますと、
機能、質感、コストパフォーマンス、このモデルが持つエピソード(歴史)などのバランスが非常に良いことに気が付きます。
機械式腕時計に興味のある方で、このモデルを全く知らないという方は、
まずいらっしゃらないのではないでしょうか。

画像: 現行Cal,1861キャリパー

現行モデルに搭載されるキャリパーCal,1861は、
オールドムーブメントの特徴を受け継ぐ優れたキャリバーだと思います。
いわゆる「二階建て」と呼ばれる、クロノモジュールをベースキャリバーに乗せる設計のクロノグラフが増える中、
クロノグラフ専用キャリバーならではのつくりの美しさは、実際に眺めてみても、ついつい見惚れてしまいます。
手巻きキャリバーということで、ローターが視界に入ってこないのも、個人的にはお気に入りです。
(3570はシースルーバックではありませんので、実際に見たい方は3573-50でお確かめください)

ベースのキャリバーはレマニア社によって開発され、 1957年のファーストモデルに搭載されたCal,321。

画像: Cal,321

Cal,321は優れたムーブメントで、現在でもこのキャリバーを搭載したヴィンテージモデルは、
高い人気を誇り、このキャリバーを指名でお探しの方も多い傑作ムーブメントです。
(程度のよいモデルはかなり高価ですが・・・)

Cal,321とCal,1861の主な違いですが、コラムホイールからカム方式に、
振動数を5振動から6振動に変更、そして外見は銅メッキからロジウムメッキになっています。
カム式になったことで生産性が高くコストダウンに成功、高振動化により精度が出しやすくなり、
メンテナンスが容易になった反面、ピラーホイールが持つ操作感の良さはなくなっています。

スピードマスターが持つバランスの良さを考えると、マニアの評価の高いCal,321より、
むしろCal,1861の方がスピードマスターの性格に合った名ムーブメントと言う事ができるかもしれません。
もし、Cal,321が継続されて搭載されていたなら、当然より高価な価格設定になったでしょうし、
ここまでスピードマスターがメジャーになったかどうか・・・。 もしかしたらモデル自体がなくなっていた可能性も考えられます。

画像: ブレゲ クラシッククロノ

【ブレゲ クラシッククロノ】

こちらはブレゲのクラシッククロノグラフです。
やはりレマニア製のコラムホイールを持つ高級機を搭載しています。
このムーブメントはパテックなどにも供給されていた定評あるムーブメントです。
オールドムーブメントの生き残りといえる機械で、ロービートの大きなテンプ、
チラねじ、そしてピラーホイールなど見ごたえがあるものの、反面非常に高コストなので、
スピードマスターなどには搭載することはできません。

こちらも名ムーブメントですが、個人的にはCal,1861も負けず劣らずだと思っています。

さて、簡単にレマニアの歴史を書き出しますと、

1884年に創業。創業者のアルフレッド・ルグリンは当初から複雑系の機械ばかり製作していました。
1900年代初頭、オメガにムーブメントを供給開始。
1932年にはレマニアと社名を変更し、SIHHグループ(現スウォッチグループ)傘下に置かれました。
1981年にはブレゲに買収されヴァンドームグループとなり、社名もヌーベル・レマニアと変更(新レマニア)されました。
1999年、スウォッチグループのブレゲ買収に伴い、レマニアもスウォッチグループの一員へ。

現在も主に高級メーカーへ機械を供給しており、
クロノグラフの名門として、ますます存在感を増しています。

オメガは『マニファクチュール(自社一貫生産)ではないから・・・』と言われる方もいらっしゃいますが、
見方を変えてしまえば、レマニアも同じグループ内の一部門ですので、マニファクチュールと言えるかもしれませんね。

もちろん、スピードマスターだけがクロノグラフの優等生ではありません。
トータルバランスのとれた時計はまだまだ他にもございます。
次は自動巻き編です。

クロノムーブメントの2大巨頭と言えば、レマニアそしてヴァルジューですが、
現行モデルで最も採用されているクロノグラフムーブメントは、ヴァルジュー7750で間違いないと思います。

画像: ETAヴァルジュー7750

そのまま使われる場合はもちろん、これをベースに様々なメーカーがユニークなモデルを作り出しています。
いかに使いやすい(改造しやすい)かが分かりますね。

もともとコンパクトな片巻き上げの自動巻き機構を採用、
残りのスペースにクロノグラフのモジュールを設置して省スペース化に成功しています。
トルクも大きく、トリプルカレンダーなどのモジュールを追加しても安心な設計です。
直径10mmのテンプを8振動で動かし、十分な精度の高さも誇ります。

画像: チュードル クロノタイム 79280

【チュードル クロノタイム 79280】

チュードルのクロノタイムですね。
宝石広場のスタッフに『7750といえば?』と聞いたところ、一番答えの多かった時計です。
ロレックス独自のオイスターケースから来る防水性の高さも有り、
非常に実用性に優れた一本です。

画像: オメガ スピードマスター オートマチックデイト 3211-31

【オメガ スピードマスター オートマチックデイト 3211-31】

オメガの自動巻きスピードマスター3211-31も7750がベースです。
7750が持つ精度が優れていることは、
このモデルがクロノメーター規格をパスしていることからも分かります。

画像: ジン 103.B.AUTO.POL.TY 103.B.AUTO.POL.TY

【ジン 103.B.AUTO.POL.TY 103.B.AUTO.POL.TY】

SINNの103.Bも7750を搭載した時計です。
ミリタリーの匂いが漂うダイヤルデザインが魅力的ですね。
手の出しやすいプライスも7750ならでは。

画像: シャウアー クロノグラフ エディション10

【シャウアー クロノグラフ エディション10】

個人的に大好きな時計です。
文字盤に‘VALJOUX7750’と記載するその潔さに惚れました。

こちらも7750の一族です。

画像: ブライトリング ブラックバード A13050.1

【ブライトリング ブラックバード A13050.1】

ケースサイズは39mmで現行品と比べると小振りですが、
ブライトリングらしい重厚感のある作りは男らしさを感じさせます。
マットな仕上げも素敵です。

画像: タグ・ホイヤー カレラタキメータークロノ CV2010.FC6205S

【タグ・ホイヤー カレラタキメータークロノ CV2010.FC6205S】

発表と共にスマッシュヒット!
同ブランド躍進の大きな原動力となりました。
秀逸のデザインは‘これぞクロノグラフ!’と言っても過言ではないでしょう。

番外偏、
こちらのムーブメントはヴァルジューでなく、ジラール・ペルゴベースですが、
格好が良く、USED品が割安なので紹介いたします。

画像: ブルガリ スクーバクロノ SC38SS

【ブルガリ スクーバクロノ SCB38S】
旧型となりましたが、ブルガリらしいデザインは今でも魅力的。
ダイバーモデルでありながら無骨にならずスタイリッシュなのは、さすがはブルガリです。

最後にご挨拶に代えて。

クロノグラフは部品点数が多くなる為、
維持費が3針の時計に比べ、どうしても高くなるデメリットがあります。
それが分かっていても抗えない魅力というのが、またクロノグラフならではです。
是非一度、機械式クロノグラフの世界に浸ってみてください。
そこには抜け出せない楽しみがあるかもしれませんよ。